APAの辞書には、「(エスノセントリズムとは、)自分が属する民族、人種、社会集団を、すべての物事の中心であるとみなすこと」とあります。エスノセントリズムの対象となる集団は、民族や人種、国家だけではなく、たとえば、学校、クラス、サークル、会社など、私たちが係わるさまざまな集団を含む集団一般なのです。テキストでは民族や国家の場合に使われるとしていますが、「エスノセントリズム」はもっと一般的な概念なのです。また、「イズム」は普通、主義と訳されますが、「行動や状態」あるいは「特性や特徴」を意味する接尾語です。第2回課題1(1)社会的排斥の「社会的」とは、自分の周囲の人たちからという意味であると考えてください。排斥と受容は、集団で暮らす私たちに重要な影響を及ぼすことを学びます。(2)自尊感情は、テキストのほかの章でも繰り返し現れる重要な概念です。テキスト第4章の方がむしろ詳しく説明されています。ソシオメーター理論も第4章で触れられています。提出課題では、社会的排斥の問題と結びつけて理解してもらうために、第2回課題で取り上げました。したがって、課題をまとめる際は、第8章だけでなく第4章も使ってください。第2回課題2(1)社会的アイデンティティ理論は、社会心理学の最も重要な理論の1つとみなされています。テキストには、アイデンティティそのものの定義は記されていません。大切な概念ですが日本語にしにくいので、ここで確認しておきます。アメリカ心理学会(APA)発行の心理学辞典には「アイデンティティとは個人の自己意識である。この自己意識はⓐ身体的、心理的、対人的な一連の特徴、およびⓑ(民族などの)様々なつながりや社会的役割によって定義される。」と定義されています。ⓐとⓑはこの課題で取りあげていることそのものです。ポイントは冒頭の一文ですから、要するに「アイデンティティとは自己意識である」、それを定義するものが2種類あるということです。自己意識ですから、アイデンティティは「自分はどのような人か(誰か)という(自己)理解」といえるでしょう。これを踏まえて課題に取り組んでください。なお、APAの辞典には補足として、次の説明がついています。「アイデンティティは(身体的または他の変化にかかわらず、私は)昨日または昨年と同じ人間であるという連続性の感覚を伴う。この感覚は、自分の身体感覚、身体イメージ、および記憶、目標、価値、期待や信条が自己に属するという感覚から得られる。」つまり、自己理解は過去との連続性に基づくわけです。(2)集団間に葛藤(紛争)が存在すると、しばしばメンバーは大きな影響を受けます。また、自己のとらえ方も含め、もの見方や行動が変化します。この事態を社会心理学がどのように説明するのかについて、理解してください。この課題は、第9章の社会的アイデンティティ理論の考え方を前提としています。そこで、社会的アイデンティティ理論の節を読み直してから、課題に取り組んでください。「エスノセントリズム」も補足説明が必要なので、記しておきます。少し長いですが、大切なところです。まず、語を構成する部分の意味から整理すると、「エスノ」はギリシャ語由来で民族、「セント」はセンター・中心、「イズム」は主義です。そこで「自民族中心主義」となるわけです。もともとの意味は、「自分たち(の民族)の基準で他(の民族)を評価すること」でした。自分たちの基準の正しさを絶対視し、それによって他集団を裁くわけです。語の中で一番分かりにくいのが「エスノ」の概念でしょう。「エスノ」はエスニシティを表す接頭語です。エスニシティは「すべての人間集団を特徴づける普遍的な概念」で、それぞれの集団がもつ文化的特徴に関係します。文化的特徴とは、具体的には集団の風俗習慣、信念、価値観、言語、宗教などを指します。すべての集団はその集団固有の、何らかの文化的特徴(「共通の考え方」だけでも十分です)を持つと考えることができます。その上で、「人は、自己を同一視する(要は、自分が属している)集団は他の集団よりも優れていると感じる傾向がある」、これがエスノセントリズムです。そこで、社会心理学の文脈では、エスノセントリズムとは、より一般的に「内集団が外集団よりも優れていると考えること、内集団(の利害)を外集団よりも優先させて行動すること、集団の成員がもつそのような特性」という意味だと考えればよいでしょう。自己中心主義は自己優越感ですが、エスノセントリズムは自分の集団の優越感になります。内集団に肩入れすることは、自動的に外集団を排斥することになります。つまり、エスノセントリズム-3-
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