232 教科書 (1)『よくわかる 社会福祉の「経営」』 小松理佐子編著 ミネルヴァ書房、2018 ISBN:978-4-623-08443-2 社会福祉領域においても、経営の視点が入り、リスクマネジメントやOJT、Off-JT、経営戦略などという言葉が使われています。これらは、社会福祉サービス以外の分野で研究、開発されてきた手法です。これに対して、社会福祉の領域では、人材育成や法人経営は従来、「スーパービジョン」や「社会福祉運営管理」という社会福祉援助技術の一環で説明されてきました。 前者の考え方が社会福祉の領域で用いられるようになったのは、社会福祉基礎構造改革により、多様な運営主体がサービス提供に参入するようになったからだと考えられます。 措置制度の下では、「経営」という考え方は弱かったといえます。これは、措置費が年度内に「使い切る」もので、効率的な運営、経営によって利潤を生み出すことを認めてこなかったからだといえます。人件費も一定の枠組みで保証される形となり、働く者としては安定している反面、よりよいサービスを提供しようとする動機を生むものでもありませんでした。 この状況を大きく変えたのが社会福祉基礎構造改革です。社会福祉法第2条で規定される「第2種社会福祉事業」には営利企業も参入してきました。これにより、社会福祉事業は「活性化」し、改革の目的は達成したともいえるのですが、人件費の削減のために非正規職員が増え、夜勤等があるにも関わらず労働条件が厳しいため、介護人材の確保が課題となっています。また、介護事故や利用者への権利侵害などの問題が出てきています。経営に目を向けてみると、職員配置基準の不正や介護報酬の不正受給などが起こっています。 また、「儲かればよい」ということから、生活保護受給者を対象とした「貧困ビジネス」と呼ばれるような事業を展開していることも明らかになってきました。 これらの問題をどのように捉え、問題が起こらないようにするにはどうすればよいのか、それがこの科目の大きなテーマであるといえます。 また、人を育てるということもこの科目のテーマです。企業で用いられている方法で、社会福祉の現場で使えるものは取り入れていってもよいはずです。どのような方法があり、どんな課題があるのかまとめてみましょう。 担当教員名 大藪 元康 RT 2単位 選択 1501600 福祉運営管理論 ◆科目の内容について・・・ ◆教科書・参考文献について・・・
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