2025年度 学習ガイドブックⅠ
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テーマ2 (第1回提出課題 課題2の作成に向けて) イエス・キリストの人間観 教科書 第8章(補講1) 苦しみについて(「神義論」という難問) 第9章(補講2) なぜ、キリスト教を学ぶのか 解 説 次に、本論を飛ばして、補講に入ります。第8章は、神などいないと思えるような大きな「苦しみ」について、私たちはどのようにとらえたらよいか、一緒に悩みたいと思います。この問題は、「3.11東日本大震災」以降、繰り返し問われてきたものです。教科書の執筆は震災以前に行われましたが、容易に答えることのできないこの課題に対して、ユダヤ人虐殺と奴隷制度という歴史上の二大受苦を経験した方々からの発言に耳を傾けたいと思います。 最後に、第9章では、受講生の多くにとっては「他」宗教であるキリスト教を学ぶ意義はどこにあるかを、「参照枠」「多様性」「少数者」「対話」といったキーワードでもって考えます。上の8章とこの9章を読むことで、一つの平和学習になると思っています。 【レポート学習で学んで欲しいこと】 あらゆる宗教において今日もっとも大切なことは、「自己批判」と「他者との対話」だと少なくとも講師は思っております。イエスはユダヤ教徒でした。そのイエスが当時のユダヤ教が陥っていた問題性に目覚め、いわば自己批判としてユダヤ教を批判した延長線上にキリスト教があります。また、イエスは、およそ人はすべて「神の像(=神の子)」であると考え、身分、性別、民族を問わずあらゆる人間との交流をはかろうとしました。 教科書では、このイエスの方向性で聖書とキリスト教を批判的にとらえながら、彼が提唱した新しい人間理解をさらに展開しようと試みました。イエスが子どもを共同体の中心に迎え入れようとしたこと、女性を仲間として迎え、共同参画の運動を起こしたことは、今日なお見られる児童虐待の現実や男女間の格差について、改めて私たちの意思を強くすることでしょう。 最後に、受講生の皆さんは、宗教に関心のある方もない方も、「対話的なこころ」と「批判的な姿勢」との両方をもって学習を進めていただきたいと思います。そして、関心を呼び覚まされたならば、仏教やその他の宗教における福祉思想にも学習を広げていただき、さらなる「参照枠」を獲得していただきたいと思います。第二次大戦後のわが国は、混迷する現代世界の中にあって、戦争を起こしてしまったことへの反省をふまえつつ、宗教間対話に努力してきた国なのですから。 形式 レポート形式 参照物 すべて可 アドバイス 科目修了試験は、指定された範囲(教科書の第4章~第7章)から1章を選んで要約し、所感を述べるというものです。ですから、提出課題にていねいに取り組んでいただければ、それが修了試験の仕方を体験することになっています。 この第2部が教科書全体の「本論」にあたります。先ず、第3章でイエスの思想の源流となった古代ユダヤ教の「人道規定」について短く触れた後、イエスの人間観に入っていきます。 第4章は、古代ローマ帝国とユダヤ教の子ども観に対照させる形で、イエスの子ども観を紹介しますが、読者はイエスの思想と行動に今日の「国連子どもの権利条約」との類似を見出すでしょう。 第5章は「老人観」です。聖書は平均寿命が著しく短かった古代において、単なる「弱 ◆科目修了試験に臨む前に・・・ 51

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